第10回 介護療養型医療施設全国研究会において、下記演題発表を行いました。
会 期:平成14年9月24日〜25日
【看護課】
骨突出のある患者様における褥瘡改善に向けてのひと工夫
〜フルーツキャップを使用して〜
【理学療法科】
療養型病床入院患者様における時計描画検査と日常生活活動との関係
骨突出のある患者様における褥瘡改善に向けてのひと工夫
〜フルーツキャップを使用して〜
●はじめに
現在、療養型病院をはじめとする医療・介護施設において褥瘡ケアに様々な工夫がされ、また多種多様の褥瘡ケア商品が褥瘡治療に使用されている。今回我々は、桃やリンゴなど果物の梱包・運搬時に用いられているフルーツキャップを重度褥瘡患者様のケアに使用し、治療に効果がみられたので報告する。
●症例
・1)患者: 65歳 男性
・2)病名: 多発性脳梗塞後遺症・四肢マヒ
・3)身体状況: 四肢主関節拘縮・ADL全介助・食事1.400Kcal/日
・4)褥瘡: 入院時より仙骨部に、SheaIV度の一部黒色壊死骨突出を伴う褥瘡を認める。
●
方法
2時間毎の体位変換に加え1日1回、以下の手順で褥瘡処置を行った。
・1)イソジン消毒
・2)生理食塩水による創洗浄
・3)ユーパスタ湿布
・4)ガーゼ保護
・5)ガーゼ保護してある上からフルーツキャップを貼用。(創縁全周にドーナツ状にしたフルーツキャップを2〜3枚重ね凹凸をなくす。)
●結果・考察
患者の骨突出の状態に合わせてフルーツキャップを貼用したことにより、創周囲の発赤が10日目より軽減し褥瘡の縮小がみられた。褥瘡周囲にフルーツキャップの跡型がついていることがあったが、それによる新しい褥瘡形成・拡大までには至らなかった。また、同時に他の寝たきり患者にも好発部位である踵部や外踝部にフルーツキャップを予防用に使用してみたが、新たな褥瘡形成は現在までみられていない。 頻回の体位変換やエアマットの使用、皮膚の清潔保持のケアに努めたことも褥瘡治療につながったおおきな要因ではあるが、フルーツキャップの形状、素材による通気性、除圧も褥瘡治療に不可欠な効果をもたらしたと思われる。更にフルーツキャップは市買されているなどの褥瘡ケア商品と比較しても職員に呼びかけるだけで気軽に収集でき、なによりコスト削減効果が得られたと考えられる。
●おわりに
患者様のQOLの向上と医療費の削減のためには、褥瘡ケアは予防に始まり、予防に終わると言われています。これからも褥瘡患者ゼロを大きな目標に、褥瘡治療・予防に更なる検討、工夫を重ねていきたい。
桃やリンゴなど果物の梱包に用いられているフルーツキャップ
入院時より仙骨部の骨突出部にSheaIV度の一部黒色壊死を伴う褥瘡
仙骨部が大きく突出している
創部をガーゼ保護した上から創縁周にドーナツ状にしたフルーツキャップを2〜3枚重ね仙骨部の凹凸をなくすように当てました。
創部もSheaI度まで改善し肉芽も良好
左の写真より1ヶ月後
療養型病床入院患者様における時計描画検査と日常生活活動との関係
●目的
高齢者における日常生活活動 (ADL) では知的能力が問題となることが多いが、ADLを判定するに有用な知能評価法は不明である。今回、療養型病床入院患者様を対象に知能検査のひとつである時計描写検査 (CD) を用いADL能力との関係を調べ、その有用性について検討した。
●方法
対象者は当院療養型病床入院患者様66名。失語症および痴呆が重度のため検査が施行不可能であった例は除外した。年齢は80.1±8.2歳(56〜99歳)、性別は男性21名、女性45名、主たる疾患は脳血管障害27名、整形疾患14名、廃用症候群12名、呼吸循環器疾患7名、その他6名である。
CDは10時10分の文字盤のある時計の絵を次の方法で描かせることにより判定する検査である。
1)白紙に時計の絵を描かせる
2)円を書けない場合には円のみを書いた用紙に数字を書かせる。
3)数字が書けない場合には、文字盤の書かれた用紙に10時10分の針を書かせる。
以上の結果を基に、円1点、数字2個で1点(計6点)、針1本で1点(計2点)で採点をし(9点満点)、さらに異常パターンを認めた場合、各0.5点の減点を行った。ADL 能力はバーテル指数(BI)を用い、実際の病棟におけるADLの実行状態を評価した。さらに、CDの妥当性を検討するために、本邦で広く用いられている改訂版長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)による評価を加え、各検査間における相関を検討した。統計学的検討はピアソンの相関係数を用い、有意水準は5%とした。
●結果
各評価の合計点は、CDでは6.9±2.6点、BIでは55.1±29.7点、HDS-Rでは17.9±8.5点となった。相関関係をみると、CDとBIの合計点では弱い相関を認めた(r-0.35)。各項目では5/10項目に相関を認め、その項目は高い順に更衣、排便、排尿、整容、トイレであった(r-0.39-0.30)。食事、入浴、階段昇降、移乗、移動では相関が認められず、これらの項目では知的能力よりも機能障害の影響が比較的強く認められた。HDS-RとBIの合計点では相関を認めなかった。各項目では整容で相関を認めた(r-0.35)が、他の9項目では相関を認めなかった。CDとHDS=Rの合計点では高い相関を認めた(r-0.73)。各項目では日時、場所、記憶、想起、復唱、流暢、計算、年齢、逆唱の全ての項目に相関を認めた(r-0.64-0.45)。
●考察
HDS-Rは言語性テストであり、見当識や記憶の影響が強いと考えられる。一方CDは動作性テストであり、記憶の他、空間認知、注意力や判断力など、ADLにより結びつきの強い要素が比較的多く反映されると考えられる。そのため、ADLに影響を与える痴呆を評価するには、HDS-RよりCDが鋭敏と考えられた。また、CDは約3分と短時間で行うことが可能であることも、臨床的な利点と考えられた。
●結論
療養型病床入院患者様66名を対象に時計描写検査と日常生活活動(バーテル指数)との関係を検討した。両者の間には弱いながらも相関を認め(更衣、排便、排尿、整容、トイレ)、ADL能力の分析には機能的検査に加えて本検査を用いることの有用性が示唆された。
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