第11回 介護療養型医療施設全国研究会において、下記演題発表を行いました。
会 期:平成15年6月12日〜13日(in 青森)
【富家病院 ・介護課】
高齢者におけるアロマテラピー 不眠・痴呆患者へのアプローチ
【富家病院・リハビリテーション科】
片麻痺例の起立能力と麻痺、非麻痺側筋力、ADLの関係
【富家千葉病院・MSW】
ソーシャルワーカーによる定期家族面談を実施して
【富家千葉病院・看護科】
胃瘻カテーテルの管理と対策について
〜布製保護用具を用いて〜
高齢者におけるアロマテラピー不眠・痴呆患者へのアプローチ
医療法人社団富家会 富家病院 介護課 岸本美和子
●はじめに
アロマテラピーは、リラクゼーションを目的とし、サウナでは芳香浴に、最近人気のエステではオイルマッサージに、家庭でも部屋の芳香や入浴剤などに一般化されつつあります。一方、メディカルアロマテラピーとしては、慢性疾患や精神疾患、皮膚疾患などに用いられ、良好な結果が得られた報告がされています。
今回、私達は不眠、感情失禁、徘徊などの痴呆症状を持つ患者様に対し、患者ケアの一つとして主にリラクゼーションを目的にアロマオイルを滴下した足浴を行い、痴呆、問題行動の軽減がみられたので報告します。
●対象・方法
対象は昼夜逆転、感情失禁、徘徊などの痴呆症状を持った患者様6名に、香りの好みを症状に合わせて、ラベンダー、カモミールローマン、オレンジの3種類から選択していただき、問題行動発症時と夕食30分後に40℃のお湯7・に精油2〜3滴滴下し、30分の足浴を行いました。
●結果
症例1.女性 69才 脳血管性痴呆
昼夜逆転し、独語が多く欲求時に奇声を発します。独語は変わりませんが、足浴を開始して1ヶ月目の後半頃より、大声を発することなく穏やかな表情でにこやかに過ごされる日が続いています。また、3ヶ月目頃に「パンツをはきたい」との意思表示があり、今ではオムツからリハビリパンツに切り替わり、トイレにて排泄をしています。
症例2.男性 73才 慢性腎不全にて透析中
不眠の訴えがあり、短気でいつもイライラした表情ですが、足浴を始めて4日目に「睡眠は続かないけど、寝つきがよくなった」との言葉が聞かれ、穏やかに会話をしてくれるようになりました。アロマを開始してまもなく便秘も解消し、かん下剤なしで排便コントロールも良好となったので、アロマ効果だと思っているようです。
症例3.女性 90才 脳血管性痴呆
昼夜問わず奇声を発し、徘徊されます。今でも、病棟内での徘徊は多少ありますが、4ヶ月ごろより奇声が聞かれなくなり、夜間も良眠されています。
症例4.女性 81才 脳出血後遺症
感情失禁が毎日のようにみられました。3ヶ月目、4ヶ月目と感情失禁の回数も減少し、それに伴って夜間も良眠されるようになりました。現在では、向精神薬も中止になっております。
症例5.女性 95才 脳血管性痴呆
夕方になると決まって「助けてくれ」「腹減ったョ」と病棟内に響き渡る大声を発しながら車椅子を自走します。連日のようにみられていた大声の回数も減少し、穏やかな表情になったように思われます。
症例6.女性 75才 慢性腎不全にて透析中
関節痛のしびれの為、夜間のナースコールが頻繁でした。足浴を始めて2週間位で定時の訪室時に訴える以外ナースコールは激減しました。「しびれは変わらないけど、アロマをしている時は気分がいいね。」とか「眠れるから痛くて目が覚めることが減った。」などの言葉が聞かれます。
足浴は、大部分の患者様に受け入れられ、「いい匂いね」「温かくてきもちいい」などの気分がリラックスされた言葉が聞かれるようになりました。2週間目頃より寝つきがよくなり、睡眠時間の延長が認められました。さらに、徘徊、興奮、感情失禁などの症状は減少し、笑顔が多く見られ病棟全体が少し静かになったように感じます。
●考察
今回、私達の取り組みはアロマの医学効果によるものと言うより、リラクゼーションや患者様へのアプローチの一つとしてアロマの足浴を行うことで患者様と接する機会が増し、新たなコミュニケーションによって介護者と患者様との相互理解が深まり、痴呆症状の緩和につながったのではないかと考えます。また、患者様との関わりの中で介護職員の意識の向上にもつながり、「○○さん、夜眠れないようだけど、消灯前にカモミールロマーンで足浴してみようか」などの言葉が介護同士の会話の中で自然に出て来るようになりました。
今後も、患者様とのコミュニケーションを大切にし、個々に合ったケアを行っていきたいと考えております。
片麻痺例の起立能力と麻痺、非麻痺側筋力、ADLの関係
富家病院、埼玉医科大学総合医療センター
理学療法士
瀧村友貴、國澤洋介、河村つや子、五嶋裕子、小関要作、高倉保幸
作業療法士
大村みさき
言語聴覚士
奥住夏与子
医 師
富家隆樹、竹井孝文、佐藤秀之
●はじめに
片麻痺患者において起立練習は最もよく行われる理学療法プログラムの1つである。麻痺の回復や非麻痺側下肢の筋力強化の目的で利用されることが多いが、歩行不能な重症例が多い長期療養型病床入院例では、歩行獲得まで至らない例が多く、理学療法室内では起立練習の効果は必ずしも明らかでない。今回、我々は起立能力と麻痺、非麻痺側下肢筋力、日常生活活動(ADL)関係について調査を行い、起立能力がADLに与える影響と起立能力獲得のための留意点について検討を行ったので報告する。
●対象と方法
対象は療養型病床入院中で平成15年3月現在理学療法を施行している脳血管障害後の片麻痺例56名(男性25名、女性31名、右片麻痺26名、左片麻痺30名)である。なお、非麻痺側に明らかな骨折や人工関節などの骨・関節疾患の既往を有するものは除外した。平均年齢は74.1±11.3歳、発症からの経過日数は63.2±58.8ヶ月、原疾患の内訳は脳梗塞37名、脳出血17名、くも膜下出血2名であった。
対象を起立能力から自立群、部分介助群、全介助群の3群に分類した。さらに、この3群における麻痺の程度、筋力、日常生活活動(ADL)能力の3項目を調査した。
筋力は非麻痺側下肢筋力から徒手筋力検査法(以下MMT)を用いて0〜5の6段階で評価した。下肢麻痺の程度はブルンストロームステージ(以下Br.stage)を用いて1〜6の6段階で評価した。ADL能力は、実際の日常生活活動からバーテル指数を用いて100点満点で評価した。統計処理についてはt検定を用い、有意水準を5%とした。
●結 果
各群間において、年齢、発症からの経過数において有意差は認められなかったが、Br.stage、MMT、バーテル指数では各群間に有意な差が認められた。特にバーテル指数では、自立群の点数が他の群より顕著に高く、13/18例(72.2%)は75点以上であった。ADLの判定に用いた移乗、整容、トイレ動作、更衣、排便・排尿コントロールの項目において、自立群の点数が高い例が多かった。
●考 察
自立群のバーテル指数は一般的に生活自立度が高いと言われている75点以上である割合が高かった。このことより起立能力は単に起立という基本動作だけでなく、様々な日常生活に影響を与える基本能力であることが示唆された。これは起立能力が高くなると移乗動作がより簡単に行えるようになるため、車椅子の利用時間、回数が多くなり、整容やトイレに行く回数が増えることが一因と考えられた。さらに、トイレに行く回数が増えるということは、単にトイレ動作という四肢・体幹の運動機能だけでなく、排尿・排便をコントロールしようとする意欲を向上させ、失禁の減少にもつながっている可能性がある。また、Br.stage、MMTに優位な差が認められたことから、起立能力の向上には麻痺の回復と非麻痺側非麻痺側の筋力強化がともに重要であり、それに応じた理学療法プログラムを立案する必要があると考えられた。
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