第12回 介護療養型医療施設全国研究会において、下記演題発表を行いました。

【富家病院・介護課】
高次脳機能障害症例の主婦業復帰
ー通所リハだから出来たことー


【富家病院・リハビリテーション科】
当院長期療養型病床におけるリハビリテーション介入例のADL変化

【富家病院・MSW】
当院におけるMSWの認知度
〜アンケート調査を実施して〜


【富家病院・看護科】
『 どうせ行っても何も出来ないし・・・』本当にそうですか?
〜療養型病床に病棟内デイサービスを取り入れて〜


【富家病院・医師】
内視鏡的胃瘻造設における創部感染対策
〜予防抗菌薬投与と感染防止キットに関する検討〜




高次脳機能障害症例の主婦業復帰
ー通所リハだから出来たことー

医療法人社団富家会 富家病院デイケアセンター
OT大村みさき  ST 奥住夏与子  Nrs 佐藤咲子 PT 井上江里奈
Nrs 伊藤かつ代  Nrs 林部啓美 Nrs 稲川和子  CW 石本雅尚
MD 富家隆樹

●はじめに
今回、高次脳機能障害を呈し、主婦業復帰となった症例を経験した。受け手のニードを通所リハの機能で応え効果が得られたと考えられ、ここで報告する。

●症例
53歳、女性。利き手は右。主婦業。H14年12月くも膜下出血発症。右片マヒ・失語症が残存。H15年2月リハセンター入院。同年5月退院。翌週より当院デイケアへの参加を開始。意識清明であるがコミュニケーションは理解・表出ともに困難。また「自分は言えないだけ」と思っている様子で、自己認識の低さも伺えた。マヒ側は、自動可動するも誤った動作方法によりROM制限・痛みが起こり上肢は補助的にも使用されず、下肢は支柱付短下肢装具装着・T字杖での歩行。ADLは動作の拙劣さと状況判断困難により誘導が必要。以上より、ADL低下は、高次脳機能障害(特に失語症・遂行機能障害)の影響が大きいと考えられた。

●経過
目標を[コミュニケーション向上及びADL自立]とし、STでは話しているつもりでも伝わっていない・相手の話も理解できていないことを認識することから、OTでは遂行の改善を、PTでは歩容の改善を目的にデイケアを開始した。開始後2ヶ月、右上肢は動作姿勢を変えたことで痛み・ROM制限が改善され生活場面での使用が拡がり、歩行はマヒ側への荷重・動作の滑らかさが向上したことで室内歩行が装具・杖なしで可能となった。3ヶ月経過、ST中に「わからない」「ダメ(口をさし)」と泣きながら言うなど、障害に対しての認識がみられるようになり、5ヶ月経過、右上肢は実用手となり歩容も安定し、入浴や化粧などのやや手順が複雑な遂行も可能となった為、話し言葉を補う手段として身振り手振り・書字・描画を行い、同時に音声の抑揚も広がり積極的に集団の中に入るようになった。状況判断も向上し、周囲に対しても席を譲り合ったり、服装の乱れを直してあげたり等配慮が認められるようになった。そこで開始から6ヶ月、目標を[主婦業復帰]と再設定し、STでは、広告を見て値段の比較をする事から、献立を仮定し必要な量を書字や手振りで示すなど日常生活に即した読み・書き・計算へと進めていった。OT・PTでは、作業能力を評価し家庭での家事量・問題解決時の手がかり等を指導していった。1年経過、家事全般をこなしている。炊事では、段取りの抜けや動作の遅さがあるが、刃物の扱いや火の始末に気を付けながら安全に行っている。電話応対も可能で日時程度であればメモして伝えることが出来る。また、早朝に出かける家族の朝食作りの為目覚ましをセットし、準備をするといったスケジュール管理も出来ている。

●おわりに
リハセンター退院は本人・家族にとって、機能回復がこれ以上望めないという引導を渡されたように感じられており、さらに在宅生活が始まると想像以上に出来ないことが多く、本人・家族共に途方に暮れていた。高次脳機能障害は患者の生活に大きく影響を及ぼすが、社会全体での認知も乏しく適切な介入が難しい。今回、言語・遂行の改善から主婦業復帰まで進めることができたのは、デイケアスタッフがそれぞれの専門性を発揮して適切な介入を行ったためではないかと考える。先日、三度の食事の支度について「主婦って大変だよね。」と話したところ、「あたりまえよ。」と笑顔で即答された。



当院長期療養型病床におけるリハビリテーション介入例のADL変化
理学療法士  小関要作、井上江里奈、五嶋裕子、瀧村友貴、加藤悠子
作業療法士  大村みさき
言語聴覚士  奥住夏与子、俵 由喜子

●はじめに
長期療養病床に入院する患者様にとって病院は療養の場であると共に生活の場でもある。それゆえ長期療養病床におけるリハビリテーション(以下リハ)は、患者様の院内生活における質の向上を目的として行われる。当院でも積極的なリハを行う事で、ADLの向上を認める患者様が少なからずいる。
そこで今回当院長期療養病床におけるリハ介入がどの程度ADLに影響を与えるのか、またどの様な例に影響を与え易いのかを調査したので報告する。

●対象
平成13年10月から平成16年3月までの間、当院入院中に理学療法を週2〜3回の頻度で施行した173例(男性67例 女性106例、評価開始時の平均年齢:73.9±12.8歳、発症から評価開始までの期間:68.4±94.0ヶ月)である。疾患内訳は、脳疾患101例(以下A群)、整形疾患42例(以下B群)、廃用症候群 30例(以下C群)である。なお、発症から評価開始までの期間が180日以下の例、死亡例、明らかな疾病の再発例は除外した。

●方法
対象症例のADL指標としてバーテル指数(以下BI)を使用した。リハ開始時(以下初回)と、リハ終了時または平成16年3月時(以下最終)の計2回のBI合計点と各下位項目点を測定し、全症例および上記の各疾患群で調査した。また各疾患群で評価開始時の年齢、発症からの期間、BI初回合計点、長谷川式簡易痴呆スケール(以下HDS-R)の点数を比較しました。

●結果
全症例における、BI合計点変化は、初回30.1±31.5点、最終30.9±32.7点で有意な変化は示さず、また、各下位項目でも同様の結果であった。
各疾患別での検討で、開始時年齢はB群>C群>A群の順で高く、B群とA群の間に有意な差を認めた。初回HDS-RはB群>C群>A群の順に点が高く、B群と他の2群、それぞれに有意な差を認めた。初回BI合計点は、B群>C群>A群の順に点が高く、A群と他の2群、それぞれに有意な差を認めた。発症からの期間には各群で有意な差を認めなかった。 疾患群別でのBI合計点では、A群で初回22.3±27.6点、最終22.1±28.8点、B群で初回41.9±31.4点、最終45.5±32.1点、C群で初回39.8±36.9点、最終40.0±37.2点であり、B群で有意な向上を認めたが、他の群は有意な変化は認めなかった。また、各下位項目ではB群の移乗にのみ有意な向上を認めた。

●考察
全症例におけるBI合計点は有意な変化を示さなかったが、これは対象例の重症度にばらつきが大きく、また臨床的には若干の改善がみられても、BIに反映されるまでの改善が全体としては認め難かった為と考えられる。
疾患別でのBI変化では、B群において合計点と移乗の項目に有意な向上を示したが、整形疾患例では高齢でも、運動麻痺や失語、認知障害、全身状態の悪化等が少なく、機能的重症度が比較的軽い事により、リハ介入による効果が得られやすかったからと考えられた。
当院では維持期から終末期の入院が多く、そのためADL能力は徐々に低下していくと予測されるが、リハの介入によりADL能力が維持、改善する例も多い為、適切な評価の下、改善の可能性を見逃さず積極的にリハを行っていく事が重要であると思われた。

●まとめ
(1)長期療養型病床入院例のADLは、リハの介入により維持されることが示唆された。
(2)機能的重症度が比較的軽い整形疾患例では、ADLレベルでの改善が期待されることが示唆された。

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