第14回 日本療養病床協会全国研究会 京都大会において、下記演題発表を行いました。
【富家病院】
長期気管切開におけるトラブルへの対処
〜気管カニューレ固定ベルトの工夫と痰キャッチャーを試みて〜
【富家病院】
食事動作における握力の影響について
【富家病院】
療養病棟におけるアートセラピー 〜臨床心理士による自己表現の機会提供〜
長期気管切開におけるトラブルへの対処
〜気管カニューレ固定ベルトの工夫と痰キャッチャーを試みて〜
富家病院
井上恵美子(看護職員)、井口朋子、郷田芳子
●はじめに
当院本館2階病棟は56床の療養病棟である。入院患者様56名中36名が長期的な気管切開を必要としている。そこで、長期気管切開における様々なトラブルを検討し、改善策を考案した。
●目的
気管切開患者様にとって快適で見た目がよく、安全かつ衛生的な環境を提供する。
●方法
対象:気管切開患者様36名
1.気管切開におけるトラブルの検討
病棟カンファレンスでの意見交換
2.改善策の実践
対象者に現在の紐とペットボトルの底のカバーから考案した固定ベルトと痰キャッチャーに換え30日間装着してもらう。
●結果
1.気管切開におけるトラブルは、頸部の発赤、糜爛などの皮膚トラブル。痰の吹き出しで病衣シーツが汚れる、入浴後紐が濡れてしまう、数日で汚れる、交換しづらいなど、見た目の悪さ、洗濯等の手間に分けられた。
2.皮膚トラブルについては、改善前は36人中12名であったが、改善後36人中2名に減少した。
3.見た目については、写真で比較した。
4.製作コストについては一人当たり2.8円であった。
●考察
痰キャッチャー使用により、吹き出た痰が肌や衣服に付着しなくなった。紐からチューブに換えたことで接点が減り、濡れたまま肌に付着することが少なくなった。以上の2点により清潔さが保て、皮膚トラブル改善と見た目の改善が図れたと考えられる。今回の研究では皮膚トラブル非改善例での素材の検討が今後の課題となった。
食事動作における握力の影響について
富家病院
宮ア弥重(作業療法士)岡村恭子 奥住夏与子 瀧村友貴 松田玲奈 松井愛美 大村みさき
●はじめに
当院においてOTは、食事動作の改善に向け、食物の認知から口への取り込みまでに対して介入することが多い。他職種からは手指操作性や把持力を補う自助具などの処方が求められることが多いが、実際には座位保持能力(体幹や頚部の支持性)低下の影響が大きいと感じられる。
握力は、身体の他の筋群の強さと相関することが知られている。そこで、今回我々は全身的な筋力の指標として握力を計測し、食事摂取能力と座位保持能力との関係を検討した。
●方法
Smedley式握力計を用い、握力計を把持することが可能であった入院患者126人(男性54人・女性72人)に対し握力を測定し、食事使用手をデータとして採用した。測定肢位は、原則として座位肘伸展位とし、座位姿勢をとることが困難なケースについては、最大限の良肢位にて測定した。食事の環境設定は、肘なし椅子(15人)・車椅子(52人)・ベッドギャッチアップ(32人)・経管栄養(27人)に分類した。
●結果
握力が計測可能であった患者群は、食事の設定がベッドギャッチアップ・車椅子・肘なし椅子利用者の75%以上を占めた。また、握力15kg以上で座位での食事が可能であるという傾向がうかがえた。それに対し、握力0kgの患者群は、食事の設定がベッドギャッチアップ・経管栄養利用者が75%以上を占めた。
●考察とまとめ
握力は年齢による体力要素の低下度が最も少なく、全身的な筋力を反映して用いられることが多い。今回の結果から、握力と食事の姿勢には相関があることがわかり、握力が計測可能であった患者群に対しては車椅子や椅子の利用による食事が目標になることが示唆された。ただし、握力が保たれているのにもかかわらず、車椅子や椅子の利用による自力摂取が困難な患者群もあった。それらの患者群については摂食・嚥下機能や認知・注意などの高次脳機能の関わりが大きい可能性が考えられた。
療養病棟におけるアートセラピー
〜臨床心理士による自己表現の機会提供〜
富家病院
平石麻奈実(臨床心理士)、富家隆樹(医師)、稲田美和子(臨床心理士)
●はじめに
当院では2名の臨床心理士が勤務し、患者様・ご家族に対し、心理的援助を日々行っている。院内におけるアクティビティにおいても、臨床心理士が中心となって芸術療法を行っている。
芸術療法とは、さまざまな手段を用いて自らを露わにしたり表現したりする、心理療法のひとつである。長期療養型病院に入院している患者様は、社会・家族から離れ、人との関わりと共に自己表現の機会を失っていることが多いと考えられる。そこで当院では、自己表現の場の提供を目的とし、芸術療法のひとつである集団アートセラピー(以下AT)を行い、その効果について検討した。
●方法
当院入院中の患者様29名(平均81歳、HDS-R平均15.8点)を対象とし、週1回約50分間のセッションを行った。実施総数6回のうち、平均出席回数は1.8回であった。参加前後の客観的気分評価として、POMS短縮版から抽出した6項目への回答を求めた。実施上の留意点としては、
1.身体疾患により使用できる道具に制限がある、
2.描画的要素が強すぎたり、あまりにも抽象的すぎる作業は心理的に負担が大きい
との理由から、プログラムを厳選し、自由に自己表現が出来るよう工夫した。
●結果と考察
本結果より、参加者はATに参加することで孤独感を低減できているということが、統計的に有意な傾向として示された。
例え身体機能的には障害があっても十分に表現出来たとの実感を伴う達成感が得られることから、活気の増加、ひいては自信回復に繋がることが考えられた。また、自他共に成果を認めることが出来るATを通し、社会性を持つ自己の存在を再確認し、孤独感をも解消することが出来るといえよう。
総じてATは、高齢者にとって自己表現の場・安心できる場として十分に機能していることが推測された。これは、臨床心理士が患者様のニーズを理解し、適切な場の設定・運営を行えていることを基に得られた成果であると考えられ、今後も継続して行い、長期的な効果についても検討していきたい。
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