7月3、4日 第16回日本療養病床協会全国研究会 福岡大会において下記の演題発表を行いました。
パワーリハビリテーション機器による全身運動の有用性について
終末期せん妄についての心理学的考察 〜その語りが意味するもの〜
パワーリハビリテーション機器による全身運動の有用性について
埼玉県 富家病院 リハビリテーション科
佐藤大輔 瀧村友貴 吉澤啓一
1.はじめに
当院では座位不安定や、歩行困難により、自転車エルゴメーターやトレッドミルを用いて全身運動を行うことができる症例が少ないため、座式上下肢協調運動機器(以下NUSTEP)を用いた運動療法を行っている。そこで我々は当院入院中でリハビリを施行している患者を対象に、NUSTEPを用いた全身運動が、主観的疲労度やバイタルサインに及ぼす影響について考察したので報告する。
2.対象と方法
当院に入院中の12名(男性9名・女性3名)の患者であり、対象者の主病名は脳血管疾患10名、廃用症候群2名であった。測定方法はNUSTEP上で坐位姿勢をとり、上下肢協調運動を行う。負荷量は20Wから開始し、3分ごとに10Wずつ負荷を上げた。この時3分ごとに、血圧・心拍数(以下HR)を測定し、同時にBorg scale表にて、呼吸(以下Borg呼吸)と上下肢の疲労(以下Borg四肢)評価し、各項目間のspearmanの相関係数を算出した。
4.結果
<各項目間の相関係数(p<0.05)>
仕事量(W)とHR 0.94 仕事量(W)とBorg(呼吸) 0.94 仕事量とBorg(四肢) 0.95 HRとBorg(呼吸)0.95 HRとBorg(四肢)0.95 Borg(呼吸)とBorg(四肢)0.98
5.考察
仕事量やHRと各Borg Scaleの値に有意な相関が見られたことから、NUSTEPによる全身運動におけるBorg scaleの有用性は高いことが予想される。しかし運動中に息苦しさを感じる以前に、上下肢の疲労が強くなる症例も見られたため、各々の評価は合わせて行うことの必要性が考えられる。また、仕事量とHRが有意に相関していることから、座位不安定や、歩行困難な症例に対しての全身持久力の向上・筋力向上の目的として、NUSTEPによる運動療法の有用性が示唆された。今後は症例数を増やし、透析・非透析患者間や心疾患の有無による測定値の違いについて検証していきたい。
終末期せん妄についての心理学的考察 〜その語りが意味するもの〜
埼玉県 医療法人社団富家会 富家病院
高橋祐子(臨床心理士)、平石麻奈実
[はじめに]
せん妄とは、軽度から中等度の意識混濁に伴い、幻覚・妄想・興奮等の様々な精神症状を伴う意識障害であり、身体疾患に罹患している患者に高頻度にみられる。特に終末期(最期の数週〜終日)には癌患者の場合、27〜83%見られるという報告もある(Centeno C,2004)が、上記のような精神症状を伴うため医療者が戸惑いを覚えることも少なくない。また、患者本人にとって苦痛となるため、終末期せん妄に対する適切な心理学的な視点を持つことは、看取りに際してのケアの質を向上させる重要な要因になると思われる。今回、臨床心理士(以下CP)の立場から、終末期せん妄の心理学的考察と終末期ケアのあり方について検討したので、ここに報告する。
[アプローチ]
慢性腎不全の診断で長期入院後、死亡された患者のうち、態度や言動が終末期に突然変化した患者3名について、逐語記録をもとに、NBM(narrative-based medicine:「物語と対話に基づく医療」)の視点に立ち、考察を行った。
[症例紹介]
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症例1
73歳・男性:「(CPへの借金を)返さなければ」「結婚して楽させてあげたい」等の妄想が意識がなくなるまでの数週間にわたって続いた。
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症例2
68歳・女性:先祖から「お墓の整理をして来いって」と語った2週間後に亡くなられた。
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症例3
68歳・女性:ある時「焼場に自分から扉を開けて入っていきました」という語りをされ、その一週間後に亡くなられた。
[まとめ]
今回の研究の結果、終末期せん妄時に語られた言葉をただの「幻覚」や「妄想」等と捉えるだけでなく、その患者の体験している世界に寄り添い、語りの意味を見出しながら関わっていくことの必要性が感じられた。それが、尊厳のある終末期と死を可能にし、患者・家族・医療者にとって意味のある看取りへとつながるのではないだろうか。
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