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”いい”あきらめ2016年10月5日

こんにちは。富家病院 臨床心理室の山本です。

日々患者さまとお話している中で、たくさんのことを学ばせていただいています。

その中からひとつ、エピソードを紹介できたらと思います。

 

回復期病棟に入院されたAさん。

ご自宅にいた頃は、お孫さんの遊びに付き合ったり、調理師だった腕を活かしておやつを作ってあげたりと、

たいへん孫煩悩?なおじいちゃんだったそうです。

 

入院当初は、病気の後遺症で身体が思うように動かず、落ち込まれていて、

「こんなんじゃ、大好きな孫と一緒に遊べない。俺はもうだめだな…」

と涙ながらに語られました。

 

できるようになったこと・まだできないこと、リハビリの進捗に一喜一憂しながら、

入院から2か月ほど経った頃のAさんとのお話の中でこんな言葉がありました。

 

『”あきらめ”には二つある。

一つ目は、うまくいかないから、「もう無理だ」と途中で投げ出しちゃう ”悪い” あきらめ。

二つ目は、うまくいかなくても、「俺はこれができないんだ。でもあれならできるかも」と

気持ちを整理して、

できることをやっていくための“いい” あきらめ。

“いい”あきらめがあるなんて、病気になるまで思いもしなかったなあ』

 

ふと気になって、「あきらめる」ということばについて調べてみたところ、

万葉集から「あきらむ (明らむ)」と用いられた歴史のあることばで、

当時は”十分に見て、 よくわかる”  “心を晴らす”と、肯定的な意味で用いられたそうです。

 

病気やけがに限らず、悲しいことがあったとき、大切なものをなくしたとき、大きな壁にぶつかったとき…

それまでと同じ道を歩むことがむずかしいときもあると思います。

自分のおかれている状況を見つめて、気持ちを整理し、その上でいままでと違う道を探してみる、というのも一つの手段かもしれません。

“あきらめ”というと否定的なイメージが強いですが、

Aさんのお話から、肯定的な側面もあるということに気づかせていただきました。

 

もちろん、”あきらめ”は簡単なことではなく、たいへんな心の作業がともないます。

そんな時に何か手助けができるように、日々努力していきたいと思います。

20161005

カテゴリー:富家病院

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